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インディ・ジョーンズ最新作で、ハリソン・フォードがどうしても見せたかったものとは? カンヌ会見を現地レポート

大ヒットシリーズの第5作目となる『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(6月30日公開)が、5月18日に第76回カンヌ国際映画祭でワールドプレミアされた。現地で主演ハリソン・フォードやマッツ・ミケルセンが語ったこととは?

ヴェールを脱いだ『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』より。手前はフィービー・ウォーラー=ブリッジ演じるヘレナ。Photo: ©2023 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.

Jonathan Olley

シリーズ最新作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』の舞台は1969年。考古学者で冒険家のインディことインディアナ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)は旧友の娘ヘレナ(フィービー・ウォーラー=ブリッジ)から話を持ち掛けられ、歴史を変える秘宝「運命のダイヤル」を求め、最後にして最大の冒険に挑む。因縁のあるナチスの科学者フォラー(マッツ・ミケルセン)と、世界をまたにかけての大争奪戦を繰り広げるが、果たして秘宝は誰の手に? そして、「運命のダイヤル」がもつ“人間の想像を超える力”とは一体何なのか?

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』より。Photo: ©2023 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.

Lucasfilm Ltd.

ジョン・ウィリアムズの耳慣れたテーマソングをバックに、息をつく暇のない、アドレナリン全開のアクションのシーンの連続というシリーズの売りは健在で、スタントを使っているとはいえ、今年80歳のフォードの大奮闘は見応えたっぷり。インディのウィットに富んだ見せ場が来る度に、スクリーニング会場の観客たちは拍手喝采を送っていた。シリアスなジャーナリストが多いカンヌで、ハリウッド大作に対するこうした反応は極めて稀なので、この現象自体が、ハリソン・フォード演じるインディが映画人にも深く愛されていることを物語っている。

「インディが私の人生にもたらしたものを愛している」(ハリソン・フォード)

記者会見で笑顔を見せるハリソン・フォード。Photo: Sebastien Nogier/Pool/Getty Images)

Sebastien Nogier/Getty Images

翌19日には記者会見が開催され、主演のハリソン・フォードを始め、敵役として本シリーズ初参戦のマッツ・ミケルセン、ジェームズ・マンゴールド監督らが登壇した。シリーズ最後と噂される本作への思い入れを聞かれたフォードは、「僕はこの仕事が大好きで、このキャラクターを愛しています。インディが私の人生にもたらしたものを愛しているのです。最新作は、5作を完結させるものにしたかった。(インディの)物語をきっちり描き切りたかった。

若さゆえの勢いにものすごく頼っていたこの男が……人生の重みを背負った人間となった姿を見せたいと思いました。新たに生まれ変わらなければならず、サポートを必要とする彼の姿を見せたかった。そして、彼には(いかにも)映画的な軽い関係ではなく、誰かとの深い関係を築いて欲しいとも思いました。また、ジム(ゴールドマン監督)とも仕事をしたいとも思いました。そして、これ以上ないほどの幸運に恵まれ、すばらしい共演者、すばらしい脚本、ジムがもたらしてくれた情熱とスキル、(作曲家の)ジョン・ウィリアムズなどが集結しました。彼ら彼女らが皆で、年を重ねた私を支えてくれました」

「役者になりたいと思うずっと前に、私もインディ・ジョーンズになりたいと思った」(マッツ・ミケルセン)

記者会見でのマッツ・ミケルセン(左)とハリソン・フォード。Photo: Sebastien Nogier/Pool/Getty Images

Sebastien Nogier/Getty Images

悪役として初めて本作に参加したミケルセンは、「1作目は私が生まれる30年前に公開されました(笑)」とジョークを飛ばした後、このシリーズの魅力を語ってくれた。「本作との出会いは15歳の時で、レンタルした5本入りの映画ボックスの、確か3本目に観たのがシリーズの初回作でした。僕と兄はすっかり虜になって、何度も何度も繰り返し観ました。インディ・シリーズがレジェンドなのには理由があると思います。私たちは皆、彼になりたかったんです。役者になりたいと思うずっと前でしたが、私もインディ・ジョーンズになりたいと思いました。その気持ちわかりますよね? 世界中の人が同じことを感じたと思います。誰もがこの作品を愛しています。その理由は、作品とキャラクターがチャーミングだから。インディには短所もある。嘘をつくし、盗みを働いたりもする(笑)。でも、そんな彼のように僕らはなりたいと思うんです。僕の仲間たち、特に監督の多くは、『インディ』シリーズを観て、監督になりたいと思った人も多いのです。私はそんな作品一部になれたことをとても誇りに思っています」

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』で敵役を演じるマッツ・ミケルセン(左)は、15歳でインディの虜になったと語る。Photo: ©2023 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.

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今年の7月で81歳を迎えるフォード。前夜のプレミアでは、フォードの出演作をまとめた映像の後、サプライズでそのキャリアに対して名誉パルム・ドール賞が贈られた。スタンディングオベーションと温かい雰囲気に包まれた上映イベントを振り返って、「言葉ではとても説明できません。どう伝えたらいいのかわからないぐらいです。自分の人生が(映像として)流れ、映画のコミュニティの一員であることを強く感じるこの場所で、想像できないぐらいの歓迎を受けたこと。それらすべてがとても心地よかったですね」と語った。

ミケルセンは、会見でこんなことも述べていた。「とある日、撮影が朝5時にようやく終わり、みんな疲れ切って、早く寝ることだけを考えていたんです。でもハリソンときたら、それからバイクで50キロ走ってきたんですよ。だから、私は、彼はまだ何本かインディを作れるんじゃないかと思っています(笑)」──それが実現するならば、シリーズのすべてのファンたちは、驚きながらも、両手を挙げて歓迎するだろう。

Text: Atsuko Tatsuta